横浜国立大学素粒子理論研究室

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セミナー概要

当研究室では、外部研究者によるセミナーを不定期で開催しています。
日程:月曜日の16:00~ (不定期開催)
場所:総合研究棟 W棟 7階701号室 (詳細は アクセス)

2024年度

7月26日 金曜日 15:00~

坂田 洞察 氏 (大阪大)

モンテカルロシミュレーションを用いた放射線生物学研究 -A Geant4-DNA Nanodosimetric Approach-

放射線に誘発される細胞死は、放射線によるDNA損傷に起因する。この事実は一般に理解されてきた。 それにも関わらず、放射線がどのように、そしてどの程度DNAを損傷するのか、損傷を受けたDNAがどのような修復過程を経るのか、そして最終的にどの程度細胞死を誘導する損傷が残存するのかという一連の詳細を定量的に理解する事は困難であった。 近年、放射線生物学研究向けの放射線輸送モンテカルロシミュレーションコードGeant4-DNAを用いて、放射線に誘発されるDNA損傷や細胞死を定量的に計算可能なシミュレーションプラットフォームが開発された。 本セミナーでは、放射線に誘発される細胞死の記述方法をいくつか紹介し、特にGeant4-DNAを用いたナノドジメトリをベースとしたシミュレーションと細胞死の予測について詳説する。
7月17日 水曜日 16:00~ いつもと違います。

藤井 俊博 氏 (大阪公立大)

極高エネルギー宇宙線観測による次世代天文学の開拓

極高エネルギー宇宙線の起源および加速機構は、現在の宇宙物理学におけるもっとも興味深い謎のひとつとして研究が進められている。 極高エネルギー宇宙線は、その莫大な運動エネルギーのために銀河系内および系外の磁場で曲げられにくく、その到来方向が起源を指し示す「次世代の天文学」として期待されている。 本講演では、宇宙線についての歴史や起源候補、検出手法、テレスコープアレイ実験とピエールオージェ観測所という稼働中の宇宙線観測実験の最新成果、そしてそして史上最大級のエネルギーをもつ宇宙線「アマテラス粒子」および将来展望について紹介する。
6月18日 火曜日 16:00~

Regina Caputo 氏 (NASA)

Achieving the science of the extreme universe through developments in gamma-ray instrumentation and telescopes

The New Messengers and New Physics and Cosmic Ecosystem priority themes from the Astro2020 Decadal Survey are uniquely addressed at gamma-ray energies. The gamma-ray group at NASA’s Goddard Space Flight Center, as part of a large effort together with ANL and many groups around the world, is developing technologies and future telescopes to enable observations to fill these critical capability gaps revealed by Fermi and fully capitalize on this exciting new era. This talk will present the development of CMOS silicon pixel detectors, called AstroPix, and their planned launch on a sounding rocket; the recent balloon launch of the ComPair gamma-ray prototype telescope; the next steps for ComPair; and community efforts to prioritize gamma-ray missions such as AMEGO-X in the future.
5月24日 金曜日 15:30~

井上 芳幸 氏 (大阪大学)

TeV Neutrinos from the Vicinity of Supermassive Black Holes

IceCube, a cubic-km neutrino detector at the South Pole, has recently detected TeV neutrinos originating from a nearby supermassive black hole (SMBH) system, NGC 1068. Unlike typical astrophysical neutrino production processes, the neutrino flux from NGC 1068 is approximately two orders of magnitude higher than its gamma-ray flux. One plausible explanation for this gamma-ray deficit neutrino emission is coronal cosmic-ray activity. Coronae are intensely hot plasmas surrounding SMBHs, with temperatures around 10^9 K and sizes on the order of 10 Schwarzschild radii of the SMBH. In this presentation, I will elucidate how coronae can produce such gamma-ray deficit neutrinos. Additionally, I will introduce another scenario involving photodisintegration in the jet. Future studies on neutrino flavor ratios may provide a means to differentiate between these two scenarios.
4月26日 金曜日 15:00 ~

須釜 祥 氏 (横浜国立大学 D1)

ニュートリノ振動におけるパラメータ縮退の再考

素粒子物理学における標準模型は、素粒子実験の多くを説明することのできる理論である。 しかし、標準模型では説明できない現象も多く観測されており、標準模型を超える物理の探索は現在の素粒子物理学における重要な課題の1つである。 標準模型においてニュートリノは質量がゼロの素粒子として組み込まれている。 ニュートリノ振動はニュートリノに質量があることによって生じる現象であるため、標準模型を超える物理の1つである。 また、ニュートリノには弱い相互作用のみが働き、観測が難しいため未だ謎が多い素粒子である。したがって、ニュートリノを用いた研究では様々な新物理の探究が期待される。

現在までのニュートリノ振動研究では、ニュートリノ振動を特徴づけるパラメータの測定が行われてきた。 標準的な3世代のニュートリノ振動は、3つの混合角\(\theta_{12}、\theta_{13}、\theta_{23}\)と2つの質量2乗差 \(\Delta m^2_{21}、\Delta m^2_{31}\)、そしてCP 対称性を破る位相\(\delta \)の6つのパラメータによって表される。 これまでの実験で\(\theta_{12}、\theta _{13}、\Delta m^2_{12}、\Delta m^3_{12} \)についてはかなり精密に決定されている。 しかし、\(\theta_{23}、\delta、\Delta m^2_{31}\)の符号については未だ精密な決定はされていない。

ニュートリノ振動研究における最終的な目的は CP位相\(\delta \)の決定である。 しかし、実験によって振動確率を測定しても \( \theta \)以外のパラメータが一意に定まらず、縮退が生じてしまうパラメータ縮退という問題が指摘されている[1][2][3][4]。 その縮退解それぞれによって\(\delta \)の値が異なるため、この値の決定のためにはパラメータの縮退問題を解決することは非常に重要である。 現在では\(\theta_{13}\)が精密に決定されたことにより、\(\theta_{13}\)の縮退は、追加の\(\theta_{23}\)の縮退に置き換わった。 そしてこの\(\theta_{23}\)の縮退は、P(\(\nu_\mu \to \nu_e\))、𝑃(\(\bar{\nu}_\mu \to \bar{\nu}_e\))から得られる(\(\sin^2 2\theta_{13} , 1/ \sin^2 \theta_{23}\)) −平面上での2次曲線と𝑃(\(\bar{\nu}_e\to \bar{\nu}_e\))と𝑃(\(\nu_\mu\to \nu_\mu\))、𝑃(\(\bar{\nu}_\mu\to \bar{\nu}_\mu\))の情報を組み合わせることで、解決される可能性がある。

本研究では、パラメータ縮退が T2HK[5]、DUNE[6]、T2HKK[7]、ESS\(\nu\)SB[8]の4つの実験でどのような振舞いをし、縮退問題が解決可能かどうかを解析的に議論した[9]。


参考文献:
[1] G. L. Fogli and E. Lisi, Phys. Rev. D 54, 3667 (1996) [arXiv:hep-ph/9604415].
[2] J. Burguet-Castell, M. B. Gavela, J. J. Gomez-Cadenas, P. Hernandez and O.Mena, Nucl. Phys. B 608, 301 (2001) [arXiv:hep-ph/0103258].
[3] H. Minakata and H. Nunokawa, JHEP 0110, 001 (2001) [arXiv:hep-ph/0108085].
[4] V. Barger, D. Marfatia and K. Whisnant, Phys. Rev. D 65, 073023 (2002)[arXiv:hep-ph/0112119]
[5] K. Abe et al. [Hyper-Kamiokande Proto-], PTEP 2015 (2015), 053C02doi:10.1093/ptep/ptv061 [arXiv:1502.05199 [hep-ex]].
[6] R. Acciarri et al. [DUNE], [arXiv:1512.06148 [physics.ins-det]].
[7] K. Abe et al. [Hyper-Kamiokande], PTEP 2018 (2018) no.6, 063C01doi:10.1093/ptep/pty044 [arXiv:1611.06118 [hep-ex]].
[8] A. Alekou et al. [ESSnuSB], doi:10.3390/universe9080347 [arXiv:2303.17356 [hep-ex]].
[9] S. Sugama and O. Yasuda, Phys. Rev. D 109, no.3, 035007 (2024)doi:10.1103/PhysRevD.109.035007 [arXiv:2308.15071 [hep-ph]].