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佐藤・廣島研 素粒子・宇宙物理研究室

セミナー情報


概要

宇宙線粒子は星間空間ないしは銀河間空間中の乱れた磁場による散乱を受けながら伝搬し、その分布関数の時間発展はしばしば拡散方程式によって記述される。しかし、放射直後の源近傍での宇宙線の伝搬は弾道的(ballistic)であり、拡散近似を用いると伝搬速度が光速を超えるため拡散方程式による記述は因果律を満たさず不正確となる。特に宇宙線粒子のエネルギーが高くなると平均自由行程が長くなるため、拡散方程式が適用できない領域は無視できないほど大きくなり、源近傍の宇宙線分布を予言する際には宇宙線が高エネルギーであるほどその影響を考慮する必要がある。これまで弾道的伝搬と拡散的伝搬の両方を記述する試みは多数提案されてきたが、物理的かつ数学的に正しく有用な表式は存在していなかった。本講演では、Takahashi et al. (2024, ApJL, 967, L10) で導出された、多重散乱を受けて媒質中を伝搬する光子の確率密度関数の解析解を応用し、高エネルギー宇宙線の弾道的伝搬と拡散的伝搬の両方を統一的に記述できる解析的な分布関数の表式を紹介する。さらに、この表式を用いて源から継続して宇宙線が放出されている場合の源周辺の粒子数分布のプロファイルを計算し、拡散近似を用いた場合との違いを明らかにする。最近 LHAASO で発見されている PeV 宇宙線源 (PeVatron) からのガンマ線スペクトルに関する予言も紹介する。